身体を守るバリア角質層

人間の皮膚の一番外側の角質層と言われているところは、ケラチンというタンパク質を主な成分としているとても大切な細胞の一部です。これは、健康な肌や体を守ったり、保持したりできるように体の中で働いているのです。
角質層では、ケラチンを充満させるために細胞核も消失して、さらに細胞内の水分もほとんどなくなった、タンパク質のかたまりでできた扁平な敷石のような構造物なのです。

 

しかし、わずか0.01〜0.02mmの厚さしかないこの角質層が、私たち人間の身体の、一番外側で異物などの侵入を防いでくれている働きをしているのです。

 

角質層が防御機能を発揮するのは、ケラチンの力が大きく関係していると言われています。このケラチンは水に溶けることはありません。ケラチンは、分子同士がお互いに強く結びつき、全体的に隙間の少ない、緻密で固い構造になっています。このようなケラチンの特徴は、ケラチンに含まれるアミノ酸や、システインの性質によるものからです。

 

アミノ酸の中でもシステインというものは、硫黄を含む特殊なアミノ酸であり、別のシステインの「S」と手をつないで「S−S」という形で、強く結合する性質を持っています。この強い結合力こそが、人間の皮膚の角質に適した、ケラチンの性質の基礎になるものなのです。

 

角質層と水分の関係

ケラチンは、水に溶けない性質を持っていて、密度の高い分子集合であるわけですが、水分が皮膚のバリア機能、つまり角質層にとって不要ということではありません。それどころか、水分がないとバリア機能はかえって低下してしまいます。それは、角質をつくる、一つ一つの細胞をしっかり結合させるのには、皮膚にとって一定の水分が必要だからなのです。水分が不足して乾燥してしまうことがあると、角質の緻密性はかえって低下してしまうのです。

 

乾皮症やアトピー性皮膚炎などといった乾燥肌の状態では、角質層の中のアミノ酸の量も少ないそうです。人間の健全な角質層を維持していくのに必要な水分、それを保っている物質は、天然保湿因子と呼ばれています。その主にしているのが角質層に含まれる、遊離アミノ酸由来物質であることがわかっています。このアミノ酸は、角質層ができる時に、ある種の角質細胞の、タンパク質が分解して作られたものと考えられています。ケラチンタンパクをたくさん摂って、角質を形作っている一方では、タンパク質を分解して、保湿因子も作り出しているという働きは、とても巧妙な仕組みであるのではないでしょうか。また、角質の保湿性を高める目的で、色々なアミノ酸やその誘導体などが、保湿作用を持つ、化粧品の成分として用いられてるものが多くあります。

 

角質が外界からの異物などの物質の侵入を防ぐ、バリア機能を発揮するために行っているもう一つの仕組みは、12〜14日程度で角質が落ち、新しい角質と換わっていくことなんです。傷んだ古い角質を捨てて、新しい角質を常に補給している働きがあるのです。赤血球の場合には、寿命がくると体内で分解されて、そのタンパク質はアミノ酸にまで分解されて再利用されますが、角質の場合は寿命がくるおと捨てられとしまうです。ですから、角質が落ちてしまうことは、生体にとってタンパク質やアミノ酸の損失になってしまうことになるのです。これは避けられない損失ですから、食事などから摂って補う他にないのです。また、新しい角質を常に供給するためには、角質の下方では非常に活発な細胞分裂を行っているのです。

 

角質細胞の最初の姿といえるのが、基底細胞と呼ばれる細胞で、この細胞は12時間に1回という速度で細分裂を繰り返しています。これはガン細胞に匹敵するくらいの速さと言えるのでしょう。盛んに基底細胞が分裂して、新しい角質層を形成するために必要な、タンパク質やポリアミンの原料として、皮膚の毛細血管によって運ばれてくるアミノ酸が総て動いているのです。